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身近な人のメンタルヘルスについて講演し、「TALKの原則」について語る、みたらし加奈さん=2025年2月、本人提供

Re:Ron連載「みたらし加奈の味方でありたい」第17回

 2024年、小中高生の自殺者数が、統計のある1980年以降最多となった。

 年間527人――これは、ひとつの学校として捉えても、ほぼ1校分の生徒の命である。そこには数でははかれない、1人の人間の人生が重たく横たわる。自死は「社会的に追い詰められた末の死」と表現されることも多い。本来であれば、社会から守られるべき子どもが「自死」という選択肢を持ってしまうことを、私たちは他人ごととして済ませてはならない。

 世界保健機関(WHO)が「自殺はその多くが防ぐことのできる社会的な問題である」と示しているように、社会が変容することで、自死という選択肢を持つことを限りなく防いでいくことはできる。

 24年版自殺対策白書によると、「G7(主要7カ国)」において10~19歳の死因の1位が「自殺」なのは、日本だけである。

 しかも、そのデータはこの年だけではない。これまでもずっと、G7において日本のみがその結果を出し続けている。今おこなわれている子どもの自殺対策が、果たして適切なのかどうかも検証していかなければならない。

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「味方でありたい」は、読者の皆様からの悩みやメッセージに答えるかたちでみたらしさんが考えます。LGBTQ+の当事者、支援者の方からもお待ちしています。(相談は記事で紹介する場合があります)

 自殺の原因は単一ではなく、学校生活、家庭環境、対人関係、経済的困難、精神疾患など、さまざまな要因が複雑に絡み合う。だからこそ、社会全体だけではなく子どもを取り巻く周囲の大人も、自死に対する正しい知識は必要である。

 あまり知られていないが、精神疾患を罹患(りかん)する人の半数は14歳までに発症し、4分の3が24歳までに発症する。

 つまり、精神疾患の多くは思春期から青年期にかけて発症しており、この時期の支援が極めて重要なのだ。しかしながら、児童精神科を含む精神科医療やカウンセリングは、18歳未満であると「保護者の承諾書」がなければ受診はできない。状況によっては承諾書を請求しないケースもまれにあるが、保険証を使った時点で病院名と医療費が掲載された通知書が家に届いてしまう。「子どもは精神疾患にはかからない」といったスティグマ(偏見)を保護者が持っていた場合、医療を遠ざけてしまう可能性もあるのだ。

 私自身も、SNSで10代向…

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